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「家族はみんな違う、恐れる必要はない」ダウン症やLGBTなど描く映画から考える”多様性”

アメリカ中間選挙の直前、トランプ政権はトランスジェンダー排除の方針を打ち出した。一方で、現地時間6日の投開票ではアメリカ史上初のレズビアンでネイティブアメリカの議員や、ゲイの州知事が誕生するなど、まさに「多様性」が争点のひとつとなる選挙となった。

そんな中間選挙が行われた同日、日本の衆議院議員会館では、ある映画の試写会が行われた。

タイトルは「いろとりどりの親子」。

ダウン症や自閉症、低身長症、セクシュアルマイノリティ、重い犯罪を犯した子どもなど、親との”違い”を持った子やその家族を描いたドキュメンタリー映画だ。

本作監督のレイチェル・ドレッツィン氏が来日し、日本の国会議員とともに多様性について思いを語った。

「この映画が日本で公開されるとは思ってもみませんでした。アメリカにとって今日はとても重要な日であり、まさに『多様性のための戦い』です。来日して日本の方々と話す中で、(多様性の)葛藤は世界中で行われているのだなと実感しています」。


レイチェル・ドレッツィン監督

さまざまな「違い」をもつ6つの家族

映画にはさまざまな違いを持つ6つの家族が登場する。

「映されるのは、原作者である(ゲイである)ソロモンとその父ハワード、かつてダウン症の人々の可能性を世に示す代弁者として人気を博し「セサミストリート」にも出演していたジェイソンと、母エミリー、タイピングを覚えるまで言葉を発することがなかった自閉症のジャックと、彼のためにあらゆる治療法を試したオルナット夫妻ら、6つの親子だ」
映画「いろとりどりの親子」公式WEBサイトより

それぞれの親子に、それぞれの葛藤がある。言葉を話せず、次第にかんしゃくが大きくなる自閉症の子・ジャックを見て「一生このままなのか」と、言葉が通じないことに絶望する母・エイミー。タイピングとの出会いきっかけに親子の関係性も大きく変化する。

本作が描くのは、生きづらさを抱える人たちのサクセスストーリーではない。葛藤し、すれ違いながらも、お互いの感情に触れ合い、確かめ合い、受け入れ合っていく、その”プロセス”を描いたものだ。

低身長症の夫婦の一人であるジョセフは「みんな自分を見ると『さぞつらい人生だろう』と思う。そして『困ってない』と言うと驚かれるんだ」と話す。

しばしば私たちは、「かわいそうだから」という理由でその”違い”を受け入れようとすることがある。「障害だから」「病気だから」「かわいそうだから」。そこに私たちが”受け入れる側”であることが疑われることはない。

そして、もしその「かわいそうな人」が生きづらさを感じているとしたら、それは本人ではなく「誰によってつくられた生きづらさなのか」を問われることもない。

本作は、まさに私自身がどういう立場で、視点で、この映画に写る多様な家族を見ているのかを考えさせられるものだ。


(C)2017 FAR FROM THE TREE, LLC

かわいそうでも、成功談でもない。ただ6つの家族の幸せの形がありありと描かれている。時折、その人の人柄や発せられる言葉に涙を誘われる。

映画にも登場する原作者でゲイのアンドリュー・ソロモン氏は「子どもの頃は『正しい人生』があると思っていました。(今は)ずっと自分を苦しめていた狭い考えから解放され、自由になれた」と話す。

“違い”を受容すること、その人をその人として受け止めることが、6つの家族の形を通じて丁寧に描かれている作品だ。

日本の政治で一番欠けている「多様性」

試写会では、映画を見た国会議員が日本の「多様性」について語った。

自民党・野田聖子衆議院議員は「日本の政治の中で、一番欠けているのは『多様性』です」と話す。

「(映画をみて)私自身は個人的な背景もあり、違和感なくそれぞれの家族のエピソードに入り込むことができました。しかし、この国では多様性は見えにくく、窮屈に感じてしまいます。でも、裏返せば多様性を知ることで、可能性が広がると思うのです」。

「自分と違う人と出会う機会があまりに少ない。当事者だけでなく、当事者じゃない人も動かないといけません。(この上映会に)LGBTをきっかけに来ている人は障害を持つ人の家を知ってほしいし、障害者関連で来たならLGBTを知ってほしい。最終的な気づきは『自分と違う人がいるんだ』ということの”見える化”です。それを恐れる必要はなく、家族はみんな違うんだと、そんな思いを受け取ってほしいと思います」。

同じく自民党・馳浩議員は、同党・杉田水脈議員の新潮45への寄稿問題に言及した。

「わが党の杉田水脈議員の寄稿文が大変問題になりました。杉田水脈議員の論文は、甚だ事実誤認で、当事者の尊厳を傷つける発言が多くありました。本人がそんなつもりはなかったと釈明していますが、国会議員はなかなか簡単に発言を取り消すことはできない立場にあります。

わが党では、性的指向・性自認に関する理解増進法、そして家庭や職場や学校、地域において差別されることのない、人としての尊厳を尊重され、当事者の立場にたった対応がされるようにという理念法として立法の準備をしています。論点の整理をしたので、条文化の作業に進んでいます。引き続き、超党派の議連でも議論を深めていきます」。

国会議員で唯一レズビアンであることをオープンにしている立憲民主党・尾辻かな子衆議院議員は、「私がこうして衆議院議員をさせていただいるのが、(社会の)変化でもあるかなと思います」と話す。

「この社会はすでに多様です。しかし、映画やテレビの中では、その存在が見落とされがちです。この映画では、そんな(見落とされてしまった)あたりまえに生きている家族の楽しそうなシーンが出てきます。こういうシーンが現実でもあたりまえになったら良いなと思っています。そして『家族』は『地域』とつながっているんですよね。なので、地域とのつながりもあわせて見ていただきたいと思います。

私は、党の性的指向・性自認に関するプロジェクトチームの事務局長をつとめており、(2016年に廃案となった)LGBT差別解消法をもう一度出そうということで準備を進めています。また、G7の中で同性パートナーシップ法がないのは日本だけということで、同性パートナーシップについても議論を進めています。国会の立法をがんばりたいと思います」。

映画「いろとりどりの親子」は11月17日(土)新宿武蔵野館ほか全国で順次公開される。



プロフィール
1994年愛知県名古屋市生まれ。明治大学政治経済学部卒。一般社団法人fair代表理事。オープンリーゲイ。LGBTを理解・支援したいと思う「ALLY(アライ)」を増やす日本初のキャンペーンMEIJI ALLY WEEKを主催。

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SoshiMatsuoka • 2018-11-09


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