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「杉田水脈LGBT差別問題」の経緯を振り返る

「(LGBTは)生産性がないのです」。自民党の杉田水脈衆議院議員が『新潮45』に寄稿した論考に批判が殺到、炎上に発展した。

本文の差別的で悲惨な内容については各所で解説、批判されている通りだ。しかし、主要与野党のほとんどは杉田氏の寄稿文に問題があると発言しているにもかかわらず、未だ杉田氏本人からの謝罪や寄稿文の撤回には至っていない。

9月には自民党総裁選が控えているが、今回の問題が影響する可能性はあるのか。今回の経緯を改めて振り返ってみたい。

7月18日(水):『新潮45』が発売

● 7月18日(水)発売の月刊誌『新潮45』2018年8月号(新潮社)に、杉田議員が「LGBT」支援の度が過ぎる」というタイトルの文章を寄稿

● 同日、立憲民主党の尾辻かな子議員がこの寄稿文についてツイッターで批判。多数拡散される。その後、LGBTコミュニティに限らず、さまざまな業界・立場の人からこの寄稿文に対する批判が殺到した。

7月23日(月):メディアが報じ始める

● 週明けの23日(月)から新聞、テレビ、WEBメディア各社が今回の件について報じはじめる。

● 主に自民党のLGBT特命委員会に政策提言等を行う当事者団体「LGBT理解増進会」が緊急声明を発表。

● また、超党派でLGBTに関する法整備を求める全国組織「LGBT法連合会」が杉田水脈議員に対する抗議声明を発表

7月24日(火):稲田議員「寛容な社会を」松井知事「オカマもゲイも納税者」

● 自民党の稲田朋美衆議院議員がツイッターを開設。「私は多様性を認め、寛容な社会をつくることが『保守』の役割だと信じる」と投稿

● 大阪府の松井一郎知事が杉田議員の寄稿文に対して「オカマもゲイも納税者だから生産はしているでしょ」とツイート。批判が集まりその後ツイートは削除

● 自民党二階俊博幹事長「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」と述べ、杉田議員の発言を問題視しない考えを示した。

7月25日(水):公明党「相容れない」「責任ある言動を」

● 公明党谷合正明参議院議員がツイッターで「ある自民党議員の「生産性」がないとの誌上での発言は、LGBTだけでなく、共助社会・共生社会を構築する上で相容れない考えだ。LGBTのイデオロギー対立、分断につながっていくことに危惧を覚える。基本方針に従って、しっかり施策を推進していかなければならない。」と投稿

● 翌日7月26日には、公明党山口那津男代表が「子どもを産む、産まないことを非難がましく言うという言動はいかがなものか。国民の、社会の批判にさらされることをきちんと自覚した上で、責任ある言動をすべきだ。多様な生き方を認める、こういう寛容な社会をつくっていくことが我々の方針だ。」と述べた

7月27日(金):自民党本部前で抗議運動

● 自民党本部前で杉田水脈議員の辞職を求める抗議運動が行われ、約5000人が参加した。

7月28日(土):自民党石破元幹事長「懐が深いとは言わない」

● LGBT自治体議員連盟が抗議声明を発表した。

● 自民党石破茂元幹事長が「「生産性がない」なんてことを言ってはいけない。それが許されるようであって、自民党の多様性とは言わない。懐が深いとは言わない。人の気持ちを傷つけて、平然としているような自民党であってほしいと思っていない」と述べる

7月29日(日):自民党谷川議員「同性愛は趣味」

● インターネットテレビ「Abema TV」の番組に出演した自民党谷川とむ議員が、番組内で「同性愛は趣味」と発言

7月31日(火):立憲民主党枝野代表「総裁選挙の争点」

● 立憲民主党枝野幸男代表は「「杉田氏の考えを認めるかどうかが、総裁選挙の最大の争点にならないとおかしい。争点にならなければ、自民党全体が同じような考え方をしていると受け止めるべきだ」とコメント

● 北海道LGBT市民の連合が、自民党本部と自民党北海道連合に対し杉田氏の除名と議員辞職勧告要求を提出。自民党本部からは返答はなかったが、自民党北海道連から「自民党は多様性を受け入れる社会実現の推進に努めてきた。党本部に適切な対処を求める」と回答があった。

● 自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は「あれはあり得ない。多様な価値観と生き方がある中で、それを支えていけるかっていうことを目指して、自民党全体もやっているわけだし。だから100年時代っていうこと、そして働き方改革も、いろんなことを含めてやっている中では、やっぱりあれは違うということを言わなきゃ駄目ですよね」と述べた

8月1日(水):自民党が声明を発表

● 自民党が「LGBTに関するわが党の政策について」を発表。「今回の杉田水脈議員の寄稿文に関しては、個人的な意見とは言え、問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があることも事実であり、本人には今後、十分に注意するよう指導したところです」と、異例の声明となった。

8月2日(木):安倍首相「多様性の尊重は当然」杉田議員「今後研鑽につとめて参りたい」

● 安倍首相は「人権が尊重され、多様性が尊重される社会をつくっていくのは当然のことだ。政府・与党の方針でもある」とコメント。杉田議員の寄稿文は不適切だったとの認識を示した

● LGBT法連合会が杉田水脈議員の論考に対する自民党の対応について声明を発表した。

● 杉田議員の事務所より「自民党性的指向・性自認に関する特命委員会の古屋圭司委員長からご指導をいただきました。真摯に受け止め、今後研鑽につとめて参りたいと存じます」とコメントが発表される。

● 自民党二階幹事長は「こういうことはそんなに大げさに騒がないほうがいいんです。この程度の発言があったからと言って、帰国してからどうだってそんな話じゃありません」と発言

● 自民党石破元幹事長は「平気で人権を傷付けてしまうような言動を認めること、おとがめなしが自民党の懐の深さだとは思わない」と述べた

● 週刊文春によると、2日の夜に開かれた自民党山口県連青年部・青年局の会合に杉田議員と安倍首相が参加。杉田議員は「『すみませーん、お騒がせしています』と笑顔で現れた」という。さらに、安倍首相も杉田議員の辞職を求めるデモに対し「「彼女はそんなに有名じゃないのに、なんでみんな騒いでいるんだろうね」と語っていたという。

8月3日(金):LGBT自治体議連が声明を発表

● LGBT自治体議連が杉田氏の謝罪と寄稿文撤回を求める声明を発表。

8月5日(日):渋谷駅前で抗議運動

● 渋谷駅前で抗議運動。以降も全国各所で抗議が行われている。

8月6日(月):杉田議員「問題がある」8割を超える

● JNNの世論調査では、杉田議員の寄稿について、半数以上が「非常に問題がある」と回答。「問題がある」と答えた人を合わせると83%に上った。

8月7日(火):障害者や難病当事者らが抗議

障害者や難病当事者らが記者会見。「病気や障害によって子どもを産めない人や、表には見えにくい難病や障害のある人など、たくさんの人がLGBTの人たちと同じように傷ついている。生産性のない人など存在しない」と杉田議員に抗議した。

未だ杉田議員からの謝罪、撤回等の対応はない

BuzzFeedによると、主要の与野党は今回の杉田議員の寄稿について問題があると発言している。しかし、杉田氏本人は「研鑽につとめて参りたい」というコメントだけで、辞職や謝罪、撤回等の対応はない。

現在も新聞各社の社説で杉田氏の寄稿が批判されている。日経テレコンで検索をすると、報道されはじめた7月23日以降、杉田水脈議員に関する新聞記事は今日までで338本確認できる。

「生産性」で人を測るような人物がこのまま国会議員であり続けるのか。9月には自民党総裁選が予定されているが、今回の問題が争点の一つとなる可能性はあるのだろうか。



プロフィール
1994年愛知県名古屋市生まれ。明治大学政治経済学部卒。一般社団法人fair代表理事。オープンリーゲイ。LGBTを理解・支援したいと思う「ALLY(アライ)」を増やす日本初のキャンペーンMEIJI ALLY WEEKを主催。

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SoshiMatsuoka • 2018-08-10


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