同性婚ができないのは「1000個の社会保障を失った状態」3つの事例から婚姻の法的効果を考える

日本には同性カップルを保障する法律がない。約14万人がゴールデンウィークの代々木公園に集まった「東京レインボープライド」では、「同性婚」を求めるメッセージを掲げている人を多く見かけた。

そもそも「結婚」という言葉から、私たちは何をイメージするだろう。婚姻にはどういう効果があるのだろうか。きっと同性カップルだけでなく、異性カップルでも具体的にイメージできている人は多くないだろう。

いくつかの事例をもとに婚姻の持つ法的効果を知り、同性婚について考えるイベント「いる?いらない?同性婚」が東京、渋谷区で開催された。

「いる?いらない?同性婚」の登壇者。左から「やる気あり美」代表の太田尚樹さん。女装パフォーマーのブルボンヌさん、「にじいろかぞく」代表の小野春さん。弁護士の寺原真希子さんはウェディングドレスで登場した。

事例1)ゲイカップルの浮気、慰謝料の問題


司会をつとめた寺原弁護士によると「請求できる可能性はありますが、△です」。

「法律婚をしていると、お互いに貞操義務を負っているので、不貞行為、つまり浮気をすると不法行為になり慰謝料を請求できます。

婚姻をしていなくても、異性間の事実婚カップルでは、同居期間が長い、婚姻する意思がある、周りから夫婦と捉えられている、子どもがいるなど様々な事情が総合的に判断された上で、慰謝料請求が認められる場合があります。

しかし、結婚を前提に交際していない同性カップルの場合をここにあてはめようとすると、婚姻意思についてどう考えればよいのかということになりますね」。

自治体によるパートナーシップ証明も「総合判断のひとつの要素にはなりますが、絶対ではありません」。

事例2)同性カップルの手術同意書への署名の問題


「意識がないというのがポイントです」と寺原弁護士は話す。

「まず本人の同意が最も重要ですが、意識不明の時は、本人の同意を代わりに誰が推定できるかを考えます。しかし、実はここに法的な規定は何もないんです」。

そのため、慣習として病院側が、『家族であれば、本人がこう思っていると推定できるだろう』とし、こうした運用になっているという。

登壇者のひとりである小野春さんは、もともと男性と結婚し子どもを出産。その後離婚し、現在は同性のパートナーとお互いの連れた子どもと一緒に生活をしている。また、住んでいる自治体のパートナーシップ制度を利用し、宣誓受領書の発行も受けている。

「私は以前ガンを患ったのですが、『告知は家族しか受けられない』と聞いていたので、病院にパートナーを連れていった際、同性のパートナーであること、告知を一緒に受けたいということを医者に伝えました。幸いにも、その病院では同意書のサインを同性パートナーでもOKとしてくれました」。

しかし、それよりもっと前、小野さんの子どもが入院をした際、パートナーが入院手続きをしに行ったところ「離婚した夫でも良いから血縁者を連れてこい」と断られたことがあったという。

「その時に『自分たちの関係を証明できるものは何もない』という壁に突き当たりました。病院に何か言われても言い返せないんですよね。

私がガンになったときにも、実は主治医に何か言われたらパートナーシップ宣誓受領書を出そうとカバンに潜ませておいたんです。出さずに済んで良かったですが」。

自治体にパートナーシップ制度がない地域でも、できることはある。

寺原弁護士によると「例えばパートナーとして一緒に暮らしていますよという『公正証書』や、片方に判断する能力がなくなったときは、もう1人が後見人になりますという『任意後見』という制度があるんです」。

費用が発生してしまうが、こうした契約などによってお互いの関係を一定程度は証明することができる。しかし、それを見せても対応してくれるかどうかは病院次第になってしまうという。

事例4)同性カップルの子どもの親権の問題


もし結婚した異性カップルだった場合、共同で親権を持っているため、片方が亡くなった後は、もうひとりが子どもを育てることができる。

しかし、婚姻をしていない場合、Bさんに親権はないため、家庭裁判所が子どもの「後見人」を選任することになるという。

「そのときに Bさんが選ばれれば良いですが、血縁を重視してAさんの親が選ばれる可能性はあります」と寺原弁護士は話す。

Aさんが亡くなる前に、未成年後見人をBさんにするという『遺言』を残しておくことも、それを回避するひとつの方法だ。

「でも、親族と折り合いが悪いと、『この遺言自体が無効だ』と争われる可能性もあります」。

小野さんは、同性パートナーとお互いの子どもを育てているため、どちらかに何かが起きてしまった場合、子どもの親権はどうなってしまうのか、とてもリアルな問題だ。

「子どもがまだ喋れないような年齢であればあるほど、子育てはドキドキしてしまいます。共同親権がないので、子どもを持つ周りのレズビアンの親たちは『いざという時が不安』と常々言っていて、そう思わされながら子どもを育てるのって、随分と社会はハードなことをさせているなと思います」。

同性婚ができないのは「1000個の社会保障を失った状態」

同性カップルが今回取り上げたような困難にぶつかった際、結婚していなくても何らか対処する方法がないわけではない。

しかし、女装パフォーマーのブルボンヌさんは「ある程度は公正証書とかで対応できるけど、(手続き等を)勉強しないといけないし、でも全てが”絶対”ではないんだね」と話す。

また、小野さんは「結婚はラブラブな時に必要なものではなく、離婚するときこそ効いてくるものだと思います」と話す。

「以前アメリカに行った際、同性婚ができないと『1000個の社会保障を失った状態だ』と言われたことがあります。

つまり、結婚は社会保障のパッケージだと思うんです。それなのに、一生懸命お金も時間もかけないと人並みになれないというのはどうなんだろうと。

同性婚と言うと『特別なもの』とか、『優遇』と誤解されがちですが、欲しいのは婚姻の平等。『まだスタートラインにも立てていないから、同じところまで引き上げてくれませんか』と言っているだけなんです」。

パートナーの病気や、子どものことで『今すぐにでも同性婚が欲しい』と思っている人も確実に存在しています。のんびりしている場合ではないんです」。

ブルボンヌさんは「同性婚というとキラキラしているイメージだけど、本当に必要なのは不幸なときとか、別れるときのため。

同性婚を求めている人の中には『男女の”幸せ”みたいなものを求めている人』もいれば、『そんな幻想吹き飛んでしまえばいい』って思っている人もいる。それでも、長く一緒にいた人の死に目に会えないとか、困っているときのために(同性カップルを法的に保障する制度は)必要なのかなと。このあたりに整理が必要かもしれませんね」。

「やる気あり美」代表の太田尚樹さんは「結婚って、正直自分にとっては、好きな人とラブロマンスわっしょい!ってだけのものでした。でも今日の話を聞いて、今まで無知だったというか、こういうことを想像する機会が足りなかったと感じました。『知る』って大切で、僕ら若い世代にも知ってほしいと思います」。

今回イベントで紹介した婚姻の持つ効果は、ほんの一部分でしかない。それでも現実にこうしたことに直面した際、一緒に生きたいと思ったひとが同性であっただけで、社会から見捨てられてしまう現状がある。

同性婚や、そもそも結婚に対して抱くイメージはひとりひとり異なるだろう、しかし、同性婚したい人も、したくない人も、賛成の人も、反対の人も、まずはイメージだけで自分の考えを決めるのではなく、婚姻がどういう効果を持っているのかを知ってみる所から初めてみるのはいかがだろうか。



プロフィール
1994年愛知県名古屋市生まれ。明治大学政治経済学部卒。一般社団法人fair代表理事。オープンリーゲイ。LGBTを理解・支援したいと思う「ALLY(アライ)」を増やす日本初のキャンペーンMEIJI ALLY WEEKを主催。

Twitter @ssimtok
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SoshiMatsuoka • 2018-05-16


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